大きなカブって最初から周りの土除去すればよかったんじゃね?
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■やれやれ
 三日連続更新は疲れるよー、首が痛いし腹も減ったし散々だな
 でもこれで日にちの遅れを取り戻すという目的は達成できたし
 月の終わりにきちんと〆られたから、疲労なんて気にならない
 でもこれから書くのは月末にはそぐわない事なんだよね、うん

■短編第二段
 以前ブログで発表した2タイトルとは関係ない話を書きました
 何だか個人的にどうしてもこちらを優先させたくなっちゃって
 本編への伏線も多少含んでるけど基本的には何も語られません
 目指すは嫌味と格闘と暖かみのある話、果して巧く書けるかな
 今回の短編は途中で視点キャラが入れ替わるから難易度も高め
 今日掲載するのはまだ上記の文章に関係して無いお話だけどね
 
 
 
■シルエットブレイド ~流行りの病気で主役交代!~

喉から食道へ抜け、胃の入り口に至るまでの道が、熱湯を注ぎ込まれたかのように熱い。僅かに呼吸しただけで、空気が気管と肺に自虐的な攻撃を繰り返す。呼吸器官が痛むと、何故か離れた位置にある頭も痛み、全身の関節も鈍痛を響かせてくれる。

体中の隅から隅までが熱く煮え滾り、油断すれば全ての細胞が液体化してしまう気がした。何故か額だけ冷気の気配を感じるので、溶けるとしたら脳味噌だけ残るのだろうか。頭痛と悪寒と吐き気に侵食されきった意識の隅で、カルマ=アルヴァデッドはぼんやりと考えた。

靄のかかった視界に映るのは、白く鮮やかに光る天井の蛍光灯。最近取り替えたばかりなのか、色は白と言うより青に近い。窓の外には乾いた青空が広がっていて、雀がやはり乾いた声で鳴いていた。そこでようやく、此処が自室のベッドの上だという事にカルマは気が付いた。

目覚まし時計と思しきベルの音が鳴り、硝子細工のように繊細になっていたカルマの脳を、金鎚で殴られているような重い痛みが襲った。頭を抱えるか、耳を塞ぐか、音を止めるか、懸命に両腕を動かそうと試みたものの、関節が悲痛に悶えるだけで、結局何も出来なかった。

目覚まし時計に殺されるなんて嫌だな、とカルマが思った時、慌しく床板を蹴る音が、柔らかなベッド越しに伝ってきた。足音は次第に音量を増していったが、途中でぴたりと止んでしまった。その刹那、何時だったか扉を破壊された時と似たような音が響き、カルマの頭痛に素晴らしい相乗効果を齎した。

胃の深部から何か込み上げてくるものを感じ、カルマは必死に焼けた鉄パイプのような喉に力を入れて唸った。夢だったら良いのにとか、まだ二十年も生きてないなとか、諦観と生への執着が入り混じった思考が頭の中を這いずり回った。

「うっせえなー。どうせ二度寝すんだから目覚ましなんかセットすんなよ」

誰かの不機嫌な声が聴こえ、小言はいいから音を止めてくれとカルマは思った。こちらの懇願を察したのか、それとも単に音が煩わしかったのか、恐らく後者だと思われるが、声の主は苛立たしげに舌打ちして目覚まし時計に歩み寄った。

「大体、体調悪いってのに何で目覚ましかけようっつー発想浮かぶのかなー。訳わかんねえよなー」

声の主は腕を降ると、時計を思い切り殴った。ばぎょ、と不可解な音を立てて時計は砕け散った。カルマは一応持ち主なので、お前は馬鹿だとか、スイッチの切り方が間違っているとか言ってやろうと思ったが、既に自発的な呼吸すら困難を極めてきたため、何も言う事が出来なかった。

「お前って、流行ものには全然興味ねえくせに、変なところで流行りに乗るんだな」

ベッドの横に置かれた椅子に重心を下ろし、床を転がる壊れた時計をつま先で軽く蹴ると、声の主は眉を下げてため息をついた。ベルの音によって視覚と聴覚が半壊気味ではあったが、その声やぼやけた金色の影は、カルマの記憶に深く刻み込まれた人物と酷似していた。

「・・・・・・ゼノン?」

声を発し終えた直後、湿度を微塵も含んでいない冷えた空気が喉に入り込み、カルマは苦い味のする咳を繰り返した。声の主――ゼノン=レインフォルクは、再び喋ろうとして咳き込むカルマを目で制すと、カルマの額に乗っている濡れタオルに左手を翳し、独り言を呟くように静かに口を開いた。

「現せよ、四源を律する魔空の氷雨。一尺前方対象、雲水を滞らせ水流の帷に包め。威力は零の二。『泡戯』――起動」

歪んだ視界の中、唯一顔面に近付いた事によって幾分明確に捉えられた掌が、水面に映る景色のように、様々な形に歪んだ。何を言ったのかは巧く聞き取れなかったが、額の冷気がより強く感じられるようになった事から、水を発生させる魔法を使ったのだろう。

「全く、アゼルといいスルトといい、どうしてお前までぶっ倒れんだよ・・・・・・風邪薬は一応あるけど、こりゃ初期症状にしか効かねえやつだな」

部屋の隅でぞんざいに転がっている薬箱を乱暴にひっくり返し、風邪薬の効能を確認すると、ゼノンはやはり乱暴に薬箱を放り投げた。そもそも、ここ数年風邪など拗らせたことがなかったので、箱の中の薬の大半は使用期限が切れている気がした。

風邪。その言葉を聞いて、今日は起床した時から頭痛と目眩がした事。方向感覚が巧く機能してくれなくて、壁伝いで自分の部屋から出た事。一歩一歩進む毎に、胃の奥から吐き気が込み上げてきた事。何とか階段を降りきった直後に意識が途切れ、その場に昏倒した事をカルマは思い出した。

誰が自分を部屋まで運んでくれたのだろう――引き算を習ったばかりの小学生でも解ける計算式だったが、熱で沸騰しかけた脳味噌はひたすら機能が低下し、残念ながらカルマは正答を導き出す事が出来なかった。

曖昧な視線で見つめてくるカルマに対して鼻息を一つ鳴らすと、ゼノンは心底面倒くさそうに頭を掻いた。その態度は、「お前を部屋に運んだのは俺だ。これで一つ貸しだからな」と、露骨な自己主張をしていた。カルマはため息をつき、息の下でゼノンに礼を言った。

「風邪に効くのって、卵酒だっけか。でも作り方がわかんねえな。あとは・・・・・・生姜湯?生姜って、あのチューブに入ってる黄色いやつだよな。あれをお湯に溶かせばいいのか?つーか全員寝込んじまってるから、暫く俺が食事当番か。めんどくせえー」

深く首を捻りながら、ゼノンは先の不満を漏らし始めた。カルマは「何も飲みたくない」と答えようとしたが、言葉は出ずに咳が出た。ゼノンは下げていた眉を綺麗な四十五度角につり上げ、カルマの腕を掴んで無理矢理ベッドから引っ張り起こした。カルマの全身を、縦揺れか横揺れか判断し辛い波打った振動が襲った。

「カイズのとこに行った方がいいな。スルト達には悪いけど、お前が一番具合悪そうだ。万が一の事があったら冗談じゃ済まされねえし」

カルマは「面倒くさい」と答えようとしたが、やはり言葉は出ずに咳が出た。ゼノンの手を振り払おうにも力が入らなかったが、カルマの腕を硬く握るゼノンの手は、心無しか震えているような気がした。万が一の事って何だ――ぼんやりと考えているうちに寝巻きを脱がされ、私服に着替えさせられてしまった。

「その前に、スルトとアゼルにお前をカイズのとこに連れてくって伝えてくるわ。寝てるかもしれねえけど、ついでに晩飯何が食いたいかも訊いてくる。俺が戻ってくるまで大人しくしてろよ」

普段と何一つ変わらない太陽のような笑顔を浮かべ、ゼノンはそう言い残して部屋から出て行った。笑顔だったが、声は消え入るような酷く掠れた声だった。先程の震える手と言い、自分が病気を患った事に、ゼノンは恐怖しているのだろうか――確証など何処にもなかったが、ほんの少し胸が軋むのをカルマは感じた。
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